昭和49年発行の「日本の民話3 福島篇(未来社)」という本に南会津の話として「いわなの怪」が採録されている(これを引用元とする)。(まんが日本昔ばなしは昭和50年開始)
- 男達が毒を川に流して魚を獲ろうとする
- 坊さんがやめろと忠告する
- 男達が忠告を無視して漁を強行する
- 獲った岩魚(イワナ)があの坊さんだった
というストーリーから推察して、この「いわなの怪」をベースにまんが日本昔ばなし「イワナの怪」が制作されたのだろう。(「いわなの怪」の類話は全国にあるので、それらも参照されているだろうけど)
根流し漁
(「イワナの怪」より)
「まんが日本昔ばなし版」では、木こり達が暑くて仕事する気にならないので、根流し漁で楽してガッポリ稼ごうという「人間のクズが、この野郎(憤怒)!」って感じの描写だったが、民話「いわなの怪」によると
むかし、この部落の男たちは、朝早くから谷川をのぼり、毒流しをして魚をとりました。岩魚とりの時、山しょうの木皮をはいで、シキミの実や、タデなどと一しょにつぶして材料を作り、それを流してとりました。
平山幸三編著『日本の民話 3 福島編』、未来社、1974年、200頁。
と「部落で普通に行われている漁」として描写されている。ここの「毒流し(根流し)」で使われる「シキミ(樒)の実」は食べると甘いが猛毒で死ぬ事もあり。あとこの「毒流し(根流し)」は川の水が少ない時期じゃないと効き目が薄いとか。アゴヒゲの男が「日照り続きで淵の水も減っとるだに、明日はひとつ根流しでもしねえか」と言ってるのはその事を踏まえたセリフなのだろう。
ラストシーンについて
「なんか足んねえんだよなぁ…」なラストシーン。「アゴヒゲの男が倒れて、残りの男達が逃げ出した」だけじゃあ「何かこいつらにバチが当たるとか無いの?」と言いたくもなるが、民話「いわなの怪」によると…
ハラワタの中からは、昼飯に怪しい老僧にもわけ、自分たちも食ったきびだんごが、そのままでてきたのでした。岩魚の目は死んでからもなお、青光りに輝いていて、みんなをにらみつけているようでした。きびだんごからは毒気がでていたのか、アゴヒゲの男は、そのまま息を吹き返さずに死んでしまいました。残った者も、みんな気が狂ったようになりました。この部落では、それから長い間岩魚を取らなくなりました。奥会津の山奥へきて昼なお暗い大木の下の青暗い淵にたたずむと、岩魚の怪を思って背筋が寒くなります。
平山幸三編著『日本の民話 3 福島編』、未来社、1974年、203-204頁。
「アゴヒゲの男→死亡、残りの男達→発狂した」とオチが非常にハッキリしている。溜飲を下げて、どうぞ(迫真)。で、これを踏まえて「まんが日本昔ばなし版」を見てみるとアゴヒゲ男は倒れたままピクリとも動かない。明言はしてないが、男の死を暗示しているように見える。制作スタッフの苦心が伺えるんだよなぁ…
参考リンク
秋田・食の民俗シリーズ4(山釣り紀行)
秋田県で昔行われていた毒流し漁「アメ流し漁」についての記述あり。
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