加熱済み宇宙食4691パック

はてなダイアリーより移行

超電波空想謀略犯罪幻想大河私小説・《醜 魔 派 始末記》(第19回〜第21回)

前回(第16回〜第18回)の続き。もうちょっと続く。

第19回(2001年12月25日投稿)

51 名前: ☆超電波空想謀略犯罪幻想大河私小説不定期第十九回 投稿日: 01/12/25 17:02 id:nGo9yhAE


《醜 魔 派 始末記》 作・スミオヤジ※


(推敲大甘/視点無視)


――以来、現在に至るまで、
ラディンの消息は明らかになっていない。
(「2ちゃんねる」では国内で最初に声明文が匿名投稿され、
全板で大騒ぎになったことは記憶に新しい・・・)


彼は自己の想念に浸りながら、
いつしか公園の奧を歩いていた。


彼はやがて、
前方の路上脇に、
横長の黒いカタマリを発見した。


彼は足を止めてしばらくカタマリを見つめた。
そして小さく咳払いをしてみた。
しかしカタマリは微動すらしない。


もう一度前方のカタマリを注意深く観察する。
全体が横長で、
丸みを帯びた起伏が少しあり、
山地のパノラマ写真とシルエットが似ている気がした。
不法に捨てられた粗大ゴミの類だろうか…?
長さと大きさは人体のサイズにも近い。


――「人体」。


そこまで考えて、
彼は背筋が寒くなった気がした。


彼は少し迷ってから、
恐る恐るゆっくりと、
黒い横長のカタマリに近寄っていく。


彼は足音を立てる気がしなかった。


つづく

第20回(2002年01月11日投稿)

541 名前: ☆超電波空想謀略犯罪幻想大河私小説不定期第二十回(!) 投稿日: 02/01/11 17:56 id:v1pop+e+


《醜 魔 派 始末記》 作・スミオヤジ


※(推敲大甘/視点無視)


彼は、夜明前の長居公園の奧の路上で、
不気味な横長のカタマリを見つめていた。


彼はやがて、
ゆっくりと腰を屈め、
黒いカタマリに手を掛けて、
思い切りよく表面の布らしきものを捲った。


果して、彼が予想した通りの《それ》が現れた。
蒼い闇の中、《それ》の輪郭が少しずつ露に見えてくる。


――《それ》は間違いなく、《死人》の貌だった。


彼はじっとその場で片膝を衝いたまま、
あわれな《死人》の貌を見つめた。
《死人》は男性で、五十代くらいに見えた。
《死人》の眉間には皺が深く刻まれており、
《死人》の生前の苦労を彼に感じさせた。
《死人》は、人相・風体から見ておそらく、
睡眠中に凍死もしくは病死した浮浪者であろう。
もしかしたら、
体にかけられていた黒い布は仲間の誰かが被せたもので、
今も近くの茂みの中から《死人》と彼とを見つめているのかも知れない。


彼はそっと、
《死人》の頬に手の甲を当てた。
やはり冷たい。
よく見ると、
鼻汁が垂れて固まった跡が付いていた。
風邪をこじらせて死んだのかも知れない。
鼻毛が少しだけ出ているのが見えた。
滑稽な気がした一瞬の後に、
彼は急に寂しい気分に包まれた。


つづく

第21回(2002年01月19日投稿)

945 名前: ☆超電波空想謀略犯罪幻想大河私小説不定期第二一回 投稿日: 02/01/19 02:21 ID:t/IlcRVU


《醜 魔 派 始末記》 作・スミオヤジ


※(推敲大甘/視点無視)


――社会の競争で擦り潰された末に
生命活動を終えた、一個の肉体。


彼は、浮浪者の死が確かであることを
自らで認めた後も、その場を立去れずにいた。
無表情のまま、言葉もなく、ただじっと、
足下に横たわる浮浪者の死体を見下ろしていた。


彼の胸中は、その表情とはまるで逆に、
再び想念で占められていた。
彼の精神の内部において、
記憶した視覚情報の断片が乱舞しているという表現が、
本当なのかも知れない。


――彼の内部で、乱舞が続く。


《黒ずんだ、浮浪者の死相》
《澄切った、ラディンの微笑》
《無表情を続ける、仮面の自身》


−黒。青。紫。


三つの"印象"が、彼の内部で色彩に変換されて、
三匹の"見えない蛇"へと変化を遂げた。


つづく