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超電波空想謀略犯罪幻想大河私小説・《醜 魔 派 始末記》(第22回〜第25回)

前回(第19回〜第21回)の続き。

第22回(2002年01月19日投稿)

10 名前: ☆超電波空想謀略犯罪幻想大河私小説不定期第二一回*1 投稿日: 02/01/19 03:28 ID:t/IlcRVU


《醜 魔 派 始末記》 作・スミオヤジ


※(推敲大甘/視点無視)


――彼の内部で、乱舞が続く。


《黒ずんだ、浮浪者の死相》
《澄切った、ラディンの微笑》
《無表情を続ける、仮面の自身》


−黒。青。紫。


三つの"印象"が、彼の内部で色彩に変換されて、
三匹の"見えない蛇"へと変化を遂げた。


蛇たちは、彼の胸板を、額を、眼球を、
三ヶ所同時に突き破った。
体内を飛びだして、
彼の全身に絡みつく。
それでもなお、
蛇たちの胴体は、
彼の体内に残っている。
蛇たちが生え出した彼の肉体部分からは
それぞれ、黒・青・紫の三色の
"血流"が噴出を続けている。


もしも、神が彼を見つめていたならば、
神の瞳にだけ、"見えない蛇"の三色が、
鮮やかに映ることだろう。
そして、三色の蛇たちが彼の体内から生え出して、
三色の血にまみれた全身に絡みつく姿そのものが、
ひとつのボディ・アートとして見て取れたかも知れない。


つづく

第23回(2002年01月30日投稿)

827 名前: ☆超電波空想謀略犯罪幻想大河私小説不定期第二三回 投稿日: 02/01/30 16:45 id:P1q3dksq


《醜 魔 派 始末記》 作・スミオヤジ


※(推敲大甘/視点無視)


赤・青・紫*2の、"見えない蛇"が三匹。
彼は蛇たちに絡みつかれ、苦悶の中で身をくねらせていた。
脳裏では記憶の断片の乱舞が続く。


――改名依頼の長文メールを数時間かけて書いた夜の記憶。
――淡泊さと濃密さが奇妙に入り交じっているスレッドを見た夜の記憶。
――瞬速で絶命計画を具現化した金属翼の威力を傍観した夜の記憶。


それぞれの記憶の断片の裏側には、
当時の感情の起伏も刻印されている。
さまざまな想いが彼の脳裏で瞬時に蘇り、
不規則な乱舞を続ける。


彼は自身の記憶の数々に翻弄され、
自ら処理しきれず、溢れた出たものこそが、
"見えない蛇"の正体なのだと、心の何処かで悟っていた。


しかしそれでも、矛盾しているが、
"見えない蛇"は消えてくれず、
ますます彼の全身に絡みつき、締め上げてくる。


彼自身の内部で、
記憶と感情の混沌を処理できない限り、
"見えない蛇"は永久に消えず、
彼の発狂は確実なのかもしれない。


つづく

第24回(2002年02月07日投稿)

345 名前: ☆超電波空想謀略犯罪幻想大河私小説不定期第二四回 投稿日: 02/02/07 22:33 ID:yQ/oLcv2


《醜 魔 派 始末記》 作・スミオヤジ


※(推敲大甘/視点無視)


コンパクトディスクの裏面の輝きに似た、
鮮やかな三色の血流が、彼の全身を染め上げ、
今では彼の足下で、虹色の奇怪な血溜まりを広げていた。


三色の"見えない蛇"によって絡め取られた
彼の苦痛は限界を超え、もはや身をよじる
気力も失せ果てている。


――虚ろな、閉じかけた彼の瞳。その下の、くちびるから、
かすかな、つぶやきが漏れる。


《もう…狂っちまうよ・・・》


彼の虚ろな視線は、自身の足元の血溜まりを見つめていた。
あるいは単に、彼の瞳に映っているだけかもしれない。


――虹色の、奇怪な血溜まり。


そこから、血の流れが一筋、円形からはみ出していく。
血の一筋は、少し前方の、浮浪者の遺体へ流れていき、
横たわる浮浪者の黒ずんだ頬に接触した。


瞬間。


虚ろだった彼の瞳がきらめいた。


つづく

第25回(2002年02月15日投稿)

813 名前: ☆超電波空想謀略犯罪幻想大河私小説不定期第二五回 投稿日: 02/02/15 15:02 id:qPkr7Tn7


《醜 魔 派 始末記》 作・スミオヤジ


※(推敲大甘/視点無視)


――轟流が、彼の意識の内部に、一気に流れ込んできた。


四季の寒暖。街路の色彩。猥雑な群衆。


路上の吸い殻。震えるコップ酒。無精髭と黄色い歯。


古い雑誌や演歌の断片の数々。
色褪せた家族写真と青いテント。
そして快晴の空を横切る一羽の鴉。


彼の内部に外から流れ込んできた情報の濃度は、
圧倒的な明確さを持ち、
苦痛の中で混濁していた彼の意識に強い刺激を与えた。


彼は一瞬で自覚した。
その、外部からの刺激こそが、
彼の意識に輪郭を取り戻させたのだ。


――あの、浮浪者の、残留…思念。


「残留思念」という、
どこかで覚えた言葉が、彼の内部で閃いた。


彼は閃いた言葉の信憑性を問うまでもなく、
十分に実感し続けている。


彼が覚醒してからも、
浮浪者の残留思念は流れ込み続けており、
その記憶、主に経験情報の量は、
死者が生前に経てきた年輪に値するだけのすさまじいものだった。


つづく


明日に続く

*1:柏木のナンバリングミス。第二十二回が正しい

*2:「黒・青・紫」の三色の間違い