横山光輝版「平家物語」の1場面。基本的に「むむむ」は三国志に限らず横山作品にはよくある事である。
前回の続き
後半に進むにつれて目立ってきた横山三国志の「むむむ」である。さて最も「むむむ」とうなった「むむむ王」は誰か。最後に「むむむ」とうなった人は誰か。
41巻71頁
41巻122頁
42巻194頁
43巻26頁
43巻160頁
43巻164頁
44巻198頁
44巻204頁
45巻171頁
46巻181頁
46巻182頁
47巻21頁
馬岱の兵。一兵卒が「むむむ」と喋る唯一の例。兵士は大体「ひーっ」だからね。
47巻99頁
47巻137頁
48巻131頁
49巻30頁
50巻153頁
諸葛亮。困り顔がちょっとかわいい
51巻197頁
曹叡。魏の2代皇帝(明帝)
51巻206頁
53巻115頁
54巻135頁
劉禅。ザ・暗愚も一丁前に「むむむ」と言う
55巻
無し
56巻44頁
56巻152頁
諸葛亮。北伐に入った途端に「むむむ」が増える
57巻
無し
58巻26頁
司馬懿。謎の道具「木牛流馬」についての報告を受ける仲達
58巻113頁
59巻21頁
60巻14頁
横山三国志全60巻で「むむむ」と言った回数
114回(10/10/14修正)115回(11/02/09修正) 119回
1巻辺り1.98回の割合
「むむむ」でよくわかる三国志
「むむむ」と言った回数をまとめると以下のような表になる。
(追記:11/02/09 4つ集計漏れの為修正)
名前 | 回数 |
---|---|
曹操 | 17 |
周瑜 | 7 |
孫権 | |
劉備 | |
孟獲 | |
諸葛亮 | 4 |
曹叡 | 4 |
呂布 | 4 |
袁紹 | |
張飛 | 3 |
曹真 | 3 |
馬超 | 3 |
関羽 | 2 |
司馬懿 | 2 |
曹丕 | 2 |
張魯 | 2 |
孟達 | 2 |
劉禅 | 2 |
劉度 | 2 |
劉表 | 2 |
于禁 | 1 |
袁術 | 1 |
韓当 | 1 |
甘寧 | 1 |
魏延 | 1 |
姜維 | 1 |
金旋 | 1 |
公孫サン | 1 |
成何 | 1 |
曹洪 | 1 |
曹仁 | 1 |
趙雲 | 1 |
張コウ | 1 |
張昭 | 1 |
張苞 | 1 |
張遼 | 1 |
董承 | 1 |
董卓 | 1 |
董荼奴 | 1 |
トウ艾 | 1 |
馬遵 | 1 |
馬岱 | 1 |
馬岱の兵 | 1 |
馬忠 | 1 |
張シュウ | 1 |
傅士仁 | 1 |
ホウ統 | 1 |
李恢 | 1 |
劉封 | 1 |
呂蒙 | 1 |
魯粛 | 1 |
夏侯惇 | 1 |
丁奉 | 1 |
呉懿 | 1 |
崔諒 | 1 |
横山三国志の最多「むむむ」は、魏王・曹操の17回。二桁をたたき出しているのはこの人だけ。最高権力者はツライという事を如実に示していると言えよう。
第2位は周瑜の7回。ある意味曹操以上の「むむむ」キングである。曹操は横山三国志の2/3近くで出番があるが、周瑜は若死で出番が多くなかったのにこの回数である。ひたすら孔明に翻弄され「もうやめて、美周郎のライフはとっくにゼロよ」と(俺に)言われる位の悲劇の人である。
第3位は劉備と孫権の6回。トップを握った人は苦労するって事がわかるが、同時に「魏・呉・蜀」のパワーバランスを正確に示している(17:6:6)。「三国志」と言うから対等の国がシノギを削っているように聞こえるが、「実際は魏の一人勝ちだよね、蜀呉が勝つなんて日本が対米戦に勝つ位有り得ないよね」という身も蓋もない現実が「むむむ」で浮き彫りになったと言えよう。
(追記:11/02/09)
劉備・孫権の集計漏れがあったので周瑜・劉備・孫権で同率2位の7回。どっちにしても魏王様の「むむむ」一人勝ちと、周瑜の苦労人っぷりに変化は無し。あと孔明に弄ばれた孟獲は再集計で5回になり単独5位へ浮上。この人完全に孔明のオモチャだった。
諸葛亮(孔明)は4回。彼が初登場したのは21巻であるが、「むむむ」と言い出したのは北伐の開始(49巻)と同時であるのが興味深い。ここに至るまでに孔明に東南の風を吹かせたり、周瑜を翻弄させた事にしたり、他人が成し遂げた南蛮平定の功績を横取りさせたりして「稀代の名軍師・諸葛孔明」を創り上げて来たわけだが、実際に手掛けて成果を得られなかった北伐になると途端に「むむむ」とか言わせざるをえなくなったわけだ。伝奇小説で凄腕の剣豪やら妖術師やら(フィクション上の強者)が、結局時の権力者(現実の強者)に滅ぼされるわけだがまさにそういう事である。
関羽が「むむむ」と言ったのは2回だけであるが、そのどちらも重大な場面であるのが興味深い。1度目は17巻で関羽が曹操に投降した時、2度目は42巻で関羽が麦城に立てこもった時である。横山先生は何でもかんでも「むむむ」と言わせていたのでは無く、意図を込めて「むむむ」と言わせていた事を示している。
孔明の北伐で戦った司馬懿(仲達)は2回。「待てあわてるなこれは孔明の罠だ(55巻54頁)」とか「げーっ孔明(59巻138頁)」という台詞が有名なのでもっと「むむむ」と言ってそうなイメージだったがそんな事はなかった。司馬懿の方が上手だったと示唆する描写であると言えよう。
たかが「むむむ」されど「むむむ」
こうしてデータを眺めていると、適当に言わせているように見える「むむむ」には作者の意図・メッセージが盛り込まれている事がよく分かった。横山三国志のような一級品は「面白かった(小学生並の感想)」で終わらせるのではなく、注意深く読み込んでいくと何度でも美味しく味わえるのである。
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(10/10/15追記:呉の武将→丁奉と修正)
(追記:11/02/09 43巻160頁の劉備、46巻182頁の孟獲が抜けていたので追加。muraya23さん情報感謝)